こんにちは。終活アドバイザーのいぶきです。
本記事では遺言書をテーマにその必要性や、作成の方法について解説をしていきます!
- そもそも遺言書って書く必要あるの?
- 何種類か書き方があるのは知ってるけど自分の場合はどっちがいいの?
といった疑問について答えていきます。
先に結論を言うと、
相続がシンプルなら「書かない」もしくは「自筆証書遺言書保管制度」を利用する。
相続に希望があったり複雑な場合は「公正証書遺言」を作成する。
がベスト。
ただ、「遺言」は書いておいて欲しい。
そもそも遺言書とは何か
言葉の定義として、「遺言書」とは財産を所有する人が自分の死後にどのように財産を分けるかを示す意思を記した書面のことをいいます。具体的には、遺言者が自分の財産を誰に、どのように分配するかを明確にするための「法的文書」を指します。
法的に意思を示すことで、自分が渡したい人に財産を譲ることが可能となります。遺言書が無い場合、遺産の分け方は相続人全員による話し合い(遺産分割協議)によって決まるため、これがトラブルの原因となり最悪の場合、絶縁なんてことにもなりかねません。
似た言葉で「遺言」や「遺書」がありますが、こちらは残された家族や友人に対してのメッセージを指します。
あくまでただのメッセージのため、法的な効力は持たず、自由に書くことができます。
終活ドリルでは「4-2.親しい人へメッセージを書こう」で遺言を書くことができるので、活用してください。
ほかにも、遺言を書くことのできるアプリも複数あるため、紙で書くことが面倒な方などは一度お試しください。
→Will-遺書-:遺言を記録するシンプルなアプリ。(相手ごとに閲覧するためのパスワードを設定することもできる)
→ITAKOTO:遺言を動画で残すことができるアプリ(一部課金あり)
遺言書って書いた方がいいの?
正直、誰かに残すような大きな資産はないのに
遺言書を書く必要ってある?
実はその通りで、全員が遺言書を書いておく必要はない。
遺言書の目的は、自分が保有している資産(財産)を「誰にどう分けるのか」を示すことで「相続人同士のトラブルをなくす」こと。
(もしくは相続人がいない場合に、寄付などの自分が希望する使い方を示すこと。)
なので、結局のことろ相続の相手や分け方が決まっていたり、単純に配偶者や子供に相続するだけなど、トラブルになる可能性が低い場合、遺言書をわざわざ書く必要はそこまでない。
実際に、遺言書の発行件数でいうと、以下の通り(遺言書の種類は後述します)
- 遺言公正証書:日本公証人連合会の報告では、令和5年(2023)に全国で作成された遺言公正証書は、11万8981件。
ほかの年でも大体10万~11万件前後。 - 自筆証書遺言:法務局の遺言書保管制度の利用状況では、令和5年(2023)の利用件数は19,336件。
つまるところ、遺言書の発行件数は合計しても14万件も満たないくらい。
厚生労働省の令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況では2023年の死亡数は 157 万 5936 人。
単純計算すると遺言書を書いている人の割合は全体で10%くらいしかいない。
遺言書を作成した方がいい人とは?
ほとんどの人が書いてないっていうことはわかったけど、
逆にどんな人は遺言書を書いた方がいいの?
シンプルに「相続の分け方を自分で決めておきたい」人。
遺言書を作成した方がいい主なパターンとしては以下が挙げられます。
- ①不動産の遺産が割合が多い
→不動産の割合が多いと、現金と違い「一軒を3分割にする」などはできないため、相続に偏りが出てしまう。そのため、公平に分割するために、現物分割・換価分割・代償分割という3つの分割方法を決めておく必要があります。 - ②法定相続人の人数が多い
→「配偶者と子供」のようなシンプルな相続ならいいですが、再婚をしていて両者に子供がいる場合などは人数が多くなり、その分トラブルにつながる確率が高くなります。 - ③結婚しているけど子供はいない
→配偶者のみで子供がいない場合、「親」「兄弟」が法定相続人の対象となります。配偶者からしたら「義理の親兄弟」になるため、話し合い(遺産分割協議)がうまくいかない可能性があります。 - ④相続人同士の仲が悪い
→③と同じで、話し合い(遺産分割協議)の際にトラブルにつながる可能性があるため、明確に遺言書を書いておいた方がいいといえます。 - ⑤事業を経営している
→会社の株式を誰が相続するか(要は誰に会社を託すか)を決める必要あります。もしくは生前に事業継承しておきましょう。 - ⑥法定相続人以外の人に相続をさせたい
→お世話になった人や、姪や従妹など血縁関係はあるが法定相続人ではない人に相続をしたい場合などは遺言書を書いておく必要があります。
※一方、法定相続人は一定の割合を受け取れる「遺留分」があり、「遺留分侵害額請求」を出すことで遺留分の財産を受け取ることができます。 - ⑦慈善団体へ遺贈寄付したい
→例えば法定相続人がいない人の場合、財産は国庫に返金されるため、せっかくなら特定の慈善団体へ遺贈寄付したい場合は遺言書を書くといいでしょう。
これらに該当する場合、事前にどうしたいかを遺言書に書くことによって相続時のトラブルを回避することが可能になります。
(大体の場合、人間関係のトラブルを防ぐために使われることが多いからこそ、日ごろからのコミュニケーションは大切にしておきましょう。)
このブログのテーマでもある「終活のカジュアル化」が進めば
こういったトラブルも少なくなると思います。
例えば被相続人に、妻と子供と孫がいた場合、子供が相続放棄をするとその子供の「孫」が代襲相続人として相続権を得ます。
妻:相続の分け方どうしよう。。
子供:僕はいらないから全部お母さんが受け取ってよ!相続放棄してくるね!(家庭裁判所に申述)
【後日】
孫:やぁ、おばあちゃん。
僕が変わりに法定相続人になったから一緒に遺産分割協議しようよ。
ちょうどお金に困っていたところなんだよね!
みたいなことになります(笑)。
おそらく全力で遺産をぶんどってくる孫はいないと願いたいですが、遺産分割協議では相続人全員の署名捺印が必要なため、遠方に住んでいたりするとそれだけで手間がかかります。
孫が複数人いるとなおさらややこしい事態になるため、相続放棄の手続きは慎重に行いましょう。
※上記の場合、遺産分割協議で配偶者が10割、子供が0割相続することに決めて、遺産分割協議書を作成すれば解決します。
結局のところ、書くべき人は書いた方がいいし、必要ない人は別に書かなくてもいい。
ただ、「遺言」は親しい人へのメッセージとしてぜひ書いて欲しい。
自分の人生を見つめなおすいい機会にもなります。
→終活ドリル「4-2.親しい人へメッセージを書こう」
遺言書にはどんな種類があるの?
次に遺言書の書き方について解説をしていきます。
遺言書には様々な方式がありますが、代表的なものに「公正証書遺言」「自筆証書遺言書」の2種類があります。
それぞれの特徴について説明していきます。
公正証書遺言
法律に詳しい公証人が、公証役場で作成する方式。
財産目録や登記事項証明書、戸籍謄本、印鑑証明書などの書類を用意して、証人(2人)と一緒に公証役場に出向いて作成する。
ただし、証人については公平性を維持するため、未成年者や、推定相続人・受遺者(相続人になる可能性が高い人)、などは証人となることはできません。
知人などの第3者でも可能ですが、「証人になった」ことが相続人たちに知られたり、作成時に資産額を開示することになるため、現実的には従妹などの相続には影響のない親族を選ぶのが無難です。
※証人が見つからない場合、公証役場で証人を紹介してもらうこともできます。(1人につき6000~7000円程度費用がかかる)
公証役場ってどこにあるの?
公証役場+地域名で検索すれば出てくるよ。役所とは別物でビルの中に入っていたりする。
また、基本的に公証役場へは事前予約をしていこう。
また、公証役場への相談は無料ですが、公正証書遺言の作成には、公証人手数料令という政令で費用ががかかります。
目的の価額:遺言書で書きたい(指示をしたい)財産の総額
目的の価額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 17000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 29000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 43000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額 |
また、上記に加えて
・目的の価額が1億円までの場合、1万1000円(遺言加算) ←手数料的なもの
・法務省令で定める枚数の計算方法により4枚(横書の証書は3枚)を超えると、一枚につき250円(手数料令25条)
が加算されます。
病気等で外出できない場合は、公証人に来てもらうことも可能です。
その場合、作成日(遺言加算を除く)が1.5倍、公証人の交通費と日当(1日2万円、4時間以内は1万円)が加算されます。
自筆証書遺言書
自分で遺言書を書く方法。
自作のため費用はかかりませんが、法的な効力を持たせるためには厳格な書式に沿って作成し、家庭裁判所の検認が必要になります。
書式の具体例としては、
- 作成日と署名、捺印をする(夫婦連名なども不可)
- 財産目録以外はすべて自筆(手書き)で書く
- 訂正する場合は所定の方式で行う
などがあります。
書き方を間違えていたらどうなるの?
検認が通らず無効となりただの「本人の希望」でしかなくなる。
また、改ざんをされていても証拠がないため、かなりリスクが高い書き方。
公正証書遺言だとお金かかるし、いい方法はないの?
自筆証書遺言書を自宅保管するのはよくないけど、
「自筆証書遺言書保管制度」を使うのはいいと思うよ!
自筆証書遺言書保管制度とは
自分で作成した遺言書(自筆証書遺言書)を法務局が預かってくれる制度。
手数料3,900円を払うことで、
- 正しい方式に則って作成されているか、法務局がチェックしてくれる
- 相続発生後に法務局が、遺言者が指定した相続人等へ通知をしてくれる
- 家庭裁判所の検認が不要になる
など自筆証書遺言書のデメリットをほぼほぼカバーしてくれます。
作成は法務局が掲載しているフォーマットから行ってください。
書式のルールなど詳しくはこちらから確認してください。
ただし、法務局では方式のチェックはしてくれますが、遺言書の内容までは見ていません。(内容が曖昧だったり、矛盾があったりなどまでは見てくれない)。
加えて、認知症など判断能力があるかどうかも保証されないため、確実に作りたい方は公正証書遺言をおススメします。
法務局へ自筆証書遺言書保管制度を申請する際は事前予約をして、
あらかじめ法務局の申請書/届出書/請求書等からダウンロードして記入しておくと便利です。
また、保管の手続きを行うと自筆の遺言書は保管され、
手元に残るのは保管したことを証明する『保管証』1枚だけです。そのためコピーを取っておくとよいでしょう。
ちなみに法務局の職員曰く「専門家に頼らず一人で作成した」場合、3人に1人が遺言書の修正が必要になり、法務局に再来局することがあるそう。。
自筆証書遺言って扱いが結構大変なんだね。
公正証書遺言の方が5倍も作成数が多いのがわかった気がする。
そうだね。
だけど自筆証書遺言書保管制度だと費用はかなり抑えられるから、
「相続に希望がある(通常の相続分割にしたくないなど)」かつ、
「専門家に頼るほど複雑な相続をしない」場合は非常に使える制度だね。
まとめ
ここまで遺言書の役割と書き方について解説をしてきました。
結論として
相続がシンプルなら「書かない」もしくは「自筆証書遺言書保管制度」を利用する。
相続に希望があったり複雑な場合は「公正証書遺言」を作成する。
がベスト。
自分の場合は遺言書をどう書くのがいいかを考えて、ぜひ行動に移していただければ幸いです。
また、終活ドリルでは「4-2.親しい人へメッセージを書こう」で遺言を書くことができるので活用してください!
※自筆証書遺言書を書く場合は法務局のフォーマットから印刷してください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ほかにも終活における様々情報を発信していくので、ぜひチェックしてみてください。